中華圏の暗号資産市場への影響は、いままでの歴史を見ても計り知れないほど大きかったことはすでにご存じの方も多いでしょう。一方で私がここで「歴史」と話したのには訳があり、いまや中華圏を代表する中国本土での暗号資産ビジネスはマイニングや取引所運営を始め規制されているからである。しかしこれらの状況が変わりだしたのは今年に入ってから、中国および香港で暗号資産とブロックチェーンに対する姿勢が大きく変化しています。この記事では中華圏で変わりつつあるブロックチェーンに対する姿勢と、その中でも大きな改革を続ける香港を中心とする暗号資産ハブへの挑戦について出来事をまとめました。当メディアで激推ししてる取引所「bitbank」です。現在キャンペーンをやっているので、もしよろしければ口座開設して応援していただけると嬉しいです。はじめに暗号資産市場と中国は冒頭に触れと通り、歴史を語る上で切っても切り離せない存在なのでまずはいま課されている規制や実際にどのような影響があったのか見ていきましょう。中国での暗号資産取引禁止令2013年12月5日に中国人民銀行らが共同で暗号資産(主にビットコイン)の取引を禁止する声明を発表しました。一方でこの段階では個人の取引は禁止されておらず、実際に制限が始まったのはここ数年の話です。後ほどそこにも触れています。同月16日に同様の取引を禁止する旨を決済会社にも伝達しました。この影響により中国拠点で中国居住者に暗号資産取引を提供していた事業者は中国元での入金を停止することを余儀なくされました。中国でのトークン販売規制中国ではもとより監視国家や監視社会として世界でも名を馳せています。一般的には国民や中国拠点企業がその対象となりますが、もちろん中国自国の法定位通貨である「中国人民元(中国元)」の流出入についても適切な監視下においています。なので中国元が特定のあるところに流出している場合はそこを塞いできます。その対象になったのが暗号資産で、2017年9月のこと。ICOによる投資家に対するトークンの販売を一律に禁止する措置を取りました。一方でICOによるトークン販売への規制は、日本を始めとする中国国外でも積極的に行われています。証券性を帯び違法性の高い、かつ詳細が不透明なトークンや暗号資産という皮を被った投資商品が増えることは詐欺の増加に繋がり健全ではないとの判断です。中国でのマイニング禁止暗号資産投資と同じぐらい初期の暗号資産業界ではPoW(Proof-of-Work)トークンのマイニング投資が流行しました。代表的なの暗号資産がBitcoinやEthereum(Merge前)です。しかし環境負荷を理由に2021年6月、中国政府はマイニング禁止令を出しました。ちなみに2019年4月時点で暗号資産マイニング業務が中華人民共和国国家発展改革委員会によってブラックリストに一時期は指定されていたため少なくとも近い将来の規制は予測できました。ウイグル自治区やモンゴル自治区、四川省、雲南省では電気コストが安価なためマイニング事業が盛んで世界のシェアの過半数を占めていた時期もありましたが、禁止令が発令された次の月にはシェアは0%まで減少しました(シェアはまた復活してきている)。中国での暗号資産の全面禁止それは2021年9月24日のこと、中国人民銀行は中国での暗号資産を全面禁止しました。取引やマイニングだけにとどまらず暗号資産関連事業は全面的に禁止し、国外からの提供も禁止し、すべてを刑事罰の対象としました。背景には中国の特大プロジェクトであるデジタル法定通貨の「CBDC」を流通させる狙いがあり、加えて資金が外国へ流出すること、投資家保護などが理由として挙げられます。CBDC「デジタル人民元」の発行さいごは規制ではなく暗号資産規制の背景にあった大きな影に触れておきます。2019年末より実証実験を開始し、2020年には世界のどこよりも早く発行を開始したCBDCの「デジタル人民元」ですが、すでに中国では大きく成長しています。2022年4~12月までの実証実験では、2421万のデジタルウォレットが開設され、CBDCを活用した取引は約5534万件で、取引金額は約1104億元(日本円で約2.2兆円)とかなりのインパクトがある数値になっています(参考: Nomura Research Insititute)。ちなみにCBDCはステーブルコインや電子マネーなどと異なり現金(M1)としての価値を持ち、法定通貨の流通量にも換算される通貨です(ステーブルコインや電子マネーの場合は法定通貨量を担保に発行しているので法定通貨<ステーブルコインにはなりません)。ここまでの結果を示したことに起因し、世界中でCBDCに興味を持つきっかけづくりにも成功し、中国全体の経済活動に大きな変化を与えました。前置きが長くなりましたのでここからは実際の中国圏の取り組みを見ていきましょう。適切な規制により暗号資産事業者を誘致暗号資産業界への関心の姿勢を強く明らかにしたのは年明けの2023年1月9日のこと、大規模な企業と人材の誘致を掲げ、方針のもとで香港での企業設立や事業の拡大を積極的に推し進めていくための政府の基本方針を明らかにしました(参考: rthk.hk)。その中でも特に暗号資産関連事業者へのライセンス制度策定のための立法作業を完了したと延べ、金融安定性、投資家保護、不適切な資本活動によるリスクギャップなどへ懸念を生み出すことなく、web3や関連するテクノロジーの潜在的なイノベーションを引き出すために適切な規制を行っていけることに期待していると話しました。リテール取引の整備を急ぐ香港証券先物委員会(SFC)は香港当局が個人投資家に対して暗号資産の取引許可のためにいくつかの枠組みを整備していることを明かしました(参考: scmp.com)。しかしオフショア地域の取引所のように何でもの銘柄を上場し取引可能にするのではなく、一定数の基準を設けるなどして流動性の高い銘柄のみを取り扱い可能にする予定です。また取引所ライセンス要件などに関しても同年1~3月中に協議書を提出するとしています。同様にSFCは本件に先立ち、試験的な運用を行っています。800万香港ドル以上の資産を保有する投資家に限り暗号資産取引の許可を当時でも出しています。しかしそんな額の資産を保有している投資家は一握りなのでより多くの投資家が取引できるようにする施策です。サムスン投資部門がETFを上場サムスンの投資部門で香港支社である「Samsung Asset Management HK(SAM HK)」は1月12日に香港証券取引所(HKEX)でビットコインの先物ETFを上場しました(参考: edaily.co.kr)。現物を保有することの秘密鍵流出リスクやハッキングのリスクを一定数回避しつつ、アジア時間で取引できるETFとしてははじめてのものです。大枠の規制感について発表香港金融管理局(HKMA)は暗号資産とステーブルコインに関する基本的な当局としての方針を明らかにしました。記された文書は1月31日に公開され規制感や枠組みに関して詳しくまとめらています(参考: hkma.gov.hk)。特徴的なのは無担保型のステーブルコインは認められていないこと。年初の発表でも触れていた内容なのですが、2022年の業界動向はしっかりと踏まえた上での対応なので、適切なリスク管理を十分に行っての判断だと言えるでしょう。香港政府の予算案にweb3を香港政府の2023年度の予算案が2月22日に陳茂波(ポール・チャン)財政官によって提出されました。その中でもweb3エコシステムの発展を加速させていくために5,000万ドルの予算を割り当てると記載されていました(参考: budget.gov.hk)。これらの資産は香港政府が出資し運営しているスタートアップ支援施設の「Cyberport」にある「Web3 Hub」に投下されるとのことです。検討から実行までのスピードは流石だなという関心もありつつ、スピード感を重視した施策が裏目に出ないことを祈っています。一例として法定通貨にビットコインを採用したエルサルバドルでは関連したデモや一定の反発が起こっています。OKXがライセンス取得に向けた動き香港の暗号資産業界への姿勢を見て興味を持ったのはスタートアップや既存金融の事業者だけではありません。オフショア地域のセーシェルに拠点を置く大手暗号資産取引所のOKXが香港で現地法人を設立し、暗号資産サービスプロバイダー(VASP)のライセンス取得に向け意向を示していることをツイートしました。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%3C%2Fp%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2FHaider%2Fstatus%2F1640823339420880896%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3EOKXはVASPライセンスだけに限らず、証券や先物取引にも対応したライセンス申請を別途行う予定であることもわかっています。OKXが現在拠点を置くセーシェルは基本的に法人税が0の地域なので、それを差し置いて香港に拠点を置くメリットと意図には今後も注目です。チャン財政官がブログで意思表明香港の財務官を務めるポール・チャン氏は4月9日、自身の公式ブログにて香港が質の高い発展を遂げるための主要な方向性について発表しました。その中でも特にweb3への期待感を再度示し、適切な規制と発展の促進が必要だと表明しました(参考: fso.gov.hk)。同ブログでは現在に至るまでのインターネットを通じた発展になぞらえて、web3関連技術の必要性を説明しており、直近の予算投下に関しても触れられています。一方で技術革新や改革は簡単ではないと述べており、一歩ずつ前進していく必要があること、挑戦する覚悟があれば解決策が見えてくる。と、ここでも意気込みをあらわにしました。暗号資産の位置付けを「信託可能な財産」に香港の裁判所は2019年に閉鎖した「Gatecoin」を巡る一連の裁判の判決で、暗号資産を信託することができる財産として認める判決を下しました。今回の論点はGatecoinが保有していた暗号資産が顧客のために信託されていたとみなすべきか、それとも信託されていない財産とみなすべきかにありました。一般的な財産に値するものは現金や株式などの有形の有価証券ですが、無形資産にあたる暗号資産にも信託可能な財産性があるとみなされたということです。暗号資産ハブを目標にした発表を改めて香港証券先物委員会(SFC)は6月1日より開始が予定されている新たなVASP向けライセンスの発表に向けて、5月中に香港での暗号資産に関する枠組みを公開することが発表されました(参考: bloomberg.com)。改めてここで香港が未来の暗号資産のハブになることを目標にしていることにスポットライトがあたり、業界からの期待感の注目度も一気に上がりました。また香港証券先物委員会(SFC)は5月23日に、暗号資産取引所に関する大枠の規制案が固まったとのことでそのいくつかを発表しました(参考: apps.sfc.hk)。上場可能な銘柄についてもここでは言及しています。個人投資家が取引可能な銘柄は、時価総額が高く独立した指数に2つ以上含まれていることを条件としました。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%3C%2Fp%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2FWuBlockchain%2Fstatus%2F1660940152016113665%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E加えて香港でできないことについても発表がありました。昨今の市況を鑑みて、金利を付帯する賃借サービスの提供、Airdropなどはライセンスを持っていても不可。そして2023年度中にステーブルコインの規制が定まるまでは、個人投資家はステーブルコインを取引に使用できないと定めました。香港初のステーブルコインを発行へ香港に拠点を置きカストディ業務を主に行う「First Digital」は、6月1日に米ドルに価格がペッグしたステーブルコインの「First Digital USD($FDUSD)」をBNBチェーン上で発行することを発表しました(参考: binance.com)。発行するステーブルコインがBNB上で発行されることは、弊社にとっても少し嬉しいです。香港議員による市場参入の歓迎吴杰庄(Johnny Ng)氏が自身のツイッターで、Coinbaseを始めとする暗号資産取引所の香港参入を歓迎するとツイートしました(参考: @Johnny_nkc)。Coinbaseは数ヶ月前より米国以外を拠点とした取引所を新たにローンチしたり、先日に関してはSECから提訴されたりなど米国での営業に一層ハードルを感じていることであろう内容を汲み取っての投稿だと推測できます。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%3C%2Fp%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2FJohnny_nkc%2Fstatus%2F1667499874521350144%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E中国の最高裁でも財産性を認める判決中国の最高裁判所は暗号資産関連の裁判を執り行う際のいくつかのガイドライン(最終案ではない)を発表しました(参考: WuBlockchain)。マイニングやICOと言ったような冒頭に触れたすでに規制がされている部分に関しては改めて触れた上で、暗号資産の財産性については認めるとの大枠を示しました。北京市がweb3支援を強化へ中国北京市がイノベーション促進のためにweb3に関連したホワイトペーパーを公開したとともに、年間1億元以上の投資を行うことを発表しました(参考: thepaper.cn)。投資を発表したのは北京市の中でも「朝陽区」、2025年までにweb3産業をリードする地域にすることも同時に目標としています。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%3C%2Fp%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2Fcz_binance%2Fstatus%2F1662334590332153868%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3E一方でweb3とくくってもNFTなどが対象となる予定で、暗号資産は対象外の可能性が高いとの指摘もあります。香港の暗号資産施策と同時期の発表についてBinanceのCEOであるCZ氏も興味深いとコメントしています。約39億円の仕組み債をオンチェーンに中国銀行傘下の投資銀行である「BOTI」が香港とスイスの法律に準拠した形で計2億人民元(約39億円)の仕組み債を、中国企業として初めてブロックチェーン上で発行しました。発行は過去にもトークン化された債権を発行したことのあるスイスを拠点とするUBSが行い、主にアジア太平洋地域の顧客に対して販売を行いました。補足するとこういったオンチェーンアセットの発行はこの件だけにとどまらず、ユーロ建のデジタル債券がゴールドマンサックスらによって発行されたり、国内でもセキュリティトークンとしてブロックチェーンに乗った資産が流通しています。さいごにこのように香港を中心に大きな取り組みが行われようとしています。国内の事業者でも香港に子会社を~とか言う話も耳に入るようになったので、隣国の一取り組みとしてではなくより注目していただける機会になると嬉しいです。当メディアで激推ししてる取引所「bitbank」です。現在キャンペーンをやっているので、もしよろしければ口座開設して応援していただけると嬉しいです。