マウントゴックス、暗号資産市場の歴史の中でも大きな出来事として語られるとある事件の主人公として名を残すこと。当時は誰も想像しなかったことでしょう。ここ最近で暗号資産に興味を持った方は暗号資産の歴史をここ「日本」が作り上げたことを知らない人も多いでしょう。実は歴史に残る2大事件は日本で巻き起こっています。話を戻すとつい先程のことですが、アメリカの司法省によって本件の容疑者の特定および起訴を完了したとの発表がありました。時間はかかりましたが、やっとかという感じですね。今回はついに収束のフェーズへ入った「マウントゴックス事件」について、事件が発生してからいままでのストーリーをわかりやすく解説したのでこれを機に振り返ってみましょう。この事件を知らずにクリプトの歴史を語ることはできませんのでぜひ最後まで読んでみてください。当メディアで激推ししてる取引所「bitbank」です。現在キャンペーンをやっているので、もしよろしければ口座開設して応援していただけると嬉しいです。マウントゴックスとはマウントゴックス(Mt.GOX)とは、日本の東京・渋谷に拠点を置く株式会社MTGOXが運営するビットコインの取引所です。ちなみに運営の親会社は株式会社TIBANNEという会社です。創業時は違う代表者まずはMt.GOXの創業時から振り返りましょう。創業時のMt.GOXは、当事件によく出てくる名前のマルク・カルプレス(Mark Karpelès)氏とは異なるジェド・マケーレブ(Jed McCaleb)氏が代表と務めていました。当社の設立当初の事業はイメージしているビットコインの取引所ではなく、有名なトレーディングカードゲームの「マジックザギャザリング」の交換所でした。社名はその時のサービス内容である「Magic: The Gathering Online eXchange」の頭文字を取ったものです。しかしサービス開始からそう長くは続かず、事業はピボットを繰り返し最終的に辿り着いたのがビットコインということです。ビットコインに辿り着くまでに独自のトレーディングカードゲーム作成にもチャレンジしました。ビットコインを知ったきっかけ彼がビットコインに出会ったきっかけ、それは2010年7月のこと。日本ではあまり知られていないギークな人向けのニュースサイト「Slashdot」を通じて、彼はビットコインの存在を知ることになります。その時に彼は「ビットコインを流通させていく、そしてコミュニティを発展させていくには法定通貨(ドルや円)と交換できる場所が必要だろう」と直感的に感じ、同月18日に以前のサービスで使っていたドメイン「mtgox.com」で取引所サービスを開始しました。サービス開始から半年で代表交代ビットコイン取引所サービスを開始してから約半年が経過した2011年3月、マケーレプ氏は当時日本に住んでいたフランス人のエンジニアであるカルプレス氏に代表の座と会社を譲る決断を下しました。代表交代についてマケーレプ氏は「Mt.GOXの成長を期待しているので、そのためにはより多くの時間とリソースが必要です。なので次の段階までMt.GOXを引っ張っていける、そんなより優れた優秀な人材にバトンタッチをすることにした。」と話していました。代表交代直後に明かされる資産流出新代表への交代が発表されてから約3ヶ月が経った時のこと、2011年6月13日に478口座から計25,000BTC(当時のレートで40万ドル)が何者かによって盗まれたことが同社の公表によって明らかになりました。一方でこの時にいつ流出したかまでは触れられていませんでした。しかし後の2019年5月19日、マケーレプ氏への提訴時の情報により、少なくともマケーレプ氏が代表を務めていた2011年1月の時点でハッキング被害を受けていたが公表しなかったとも言われています。この一件はみんなが知っているMt.GOX事件の本震ではなく前震部分で、当時の対応としては補填できる準備金が取引所内に十分にあることを示すためにコールドウォレットからホットウォレットに424,242BTCを移動させるという証明方法で事態を収めました。失敗はあれど世界一に一度目の流出やその他ブロックチェーンの分岐による入出金停止などの災難に見舞われつつも、マケーレプ氏の期待通りに確実な成長を続け、2013年中には世界の7割ものビットコイン取引が行われる取引所になり市場の価格にもいい影響を与えました。その取引の加熱度合いは顕著で、いまでは絶対考えられませんが当時は価格が急騰したことを受けて取引一時停止を発表し価格を押し下げたりもしていました。各地域の法律にも準拠へ成長を続けていた最中、2013年はMt.GOXにとって困難の一年でもありました。特に同年5月は2回のトラブルに巻き込まれました。当時からアメリカ居住者へのサービス提供にはハードルが存在していたので、同社はワシントン州シアトルに拠点を置く「CoinLab」とパートナーシップを結んでサービスの提供を行なっていましたが、複数の契約不履行に起因し7,500万ドルで訴えられました。その他にも米国国土安全保障省(DHS)がMt.GOXの米国子会社にあたる決済プロバイダーの「Dwolla」に対して、米国金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)のライセンスを保有せずに無登録業者として運営していたとして口座にある500万ドル以上を押収しました。上記の出来事を通じて同年6月29日にFinCENからマネーサービスビジネス(MSB)ライセンスを取得することになりますがこれも本震に影響を与えることとなります。出金停止の発表から再開発表Mt.GOXは2013年6月20日に米ドルでの出金を一時停止すると発表しました。そこから出金を再開したとの報告を約2週間後に行うものの、度重なる問題が発生したなどを理由に出金の遅延が発生し多くのユーザーが不安を抱えることになります。掲示板での混乱と本社への乗り込みここからMt.GOXは怒涛の1ヶ月を過ごすことになります。時は少し経ち、2014年2月にかけて老舗のクリプトに特化した掲示板「Bitcoin Talk」ではMt.GOXについてさまざまな議論や、不安からの憶測が飛び交うようになりました。原因は出金の大きな遅延。何か社内での問題があったのではないかという声や、会社を信用する声、そんな議論は公式発表によって事態は一転することに。2014年2月7日、Mt.Goxは取引の不正性に基づき明確な技術的見解を得るためと説明し、ビットコインの引き出しを完全に停止しました。ソフトウェアのバグによって実際には発生していないトランザクションがあたかもあったかのようにできる可能性もあり、Bitcoin Coreのエンジニア陣にも解決に向けて協力を要請していると述べました。ここから2月後半にかけていくつかのプレスリリースを配信するものの、再開の目処は一向に立たずユーザーの不満と不安はATHを続け、ビットコインの価格は暴落し渋谷の本社ビルにはユーザーが押し寄せ、やむなく移転を迫られる事態にまで発展しました。代表が業界から消える準備この時すでに実は、744,408BTCが流出していて支払不能になっていたことが内部資料により明らかになっています。よって内部では十分に会社の存続がかなり難しかったことは周知の事実だったということです。同時期に幾つかの代表の不可解な行動が見られました。一つ目はカルプレス氏のビットコイン財団の辞任、同月23日にはTwitterの投稿を全消ししました。そして次の日、、、突如としてサイトが消滅同月24日の出来事、突如としてプラットフォーム上での取引を停止し、その数時間後にはサイト自体が削除されアクセスができないようになりました。同日にも他のビットコイン取引所を行う事業者は、Mt.Goxのウェブサイトがなくなる直前に、同社から距離を置くという内容の共同声明を発表しました。破産申請までのタイムリミットサイトの消滅から1日後にはロイターの取材に対して代表が「会社はいま転機にある」などと答えていたものの、破産申請までのタイムリミットは迫っていました。その3日後の28日には、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請しました。後に多くの債権者が海外にいること、そして実態の調査が進まないことから民事再生法適用申請を棄却されることになります。当時のレートで負債は約65億円、資産は38億4000万円だったと報告からわかりました。同年3月9日にはアメリカ本土での法的措置を回避するために米国でも破産保護を申請しました。この時点で顧客のビットコイン約75万枚に加え、自社で保有しているビットコイン約10万枚失ったとされており合わせると約85万枚になります。見つかったビットコイン破産申請などにかかる調査で社内の古いウォレットの残高を確認していたところ、2011年6月より前に使用されていたウォレットから199,999.99BTCが発見されたとの報告がありました。これにより純流出量は約65万枚へと減少しました。破産管財人の任命を受けた企業本事件の債権者がアメリカに多かったことから、アメリカを拠点とする「Kraken」が破産管財人に任命されたと同社のCEOが述べました。国内に関しては小林信明弁護士が管財人を務め、SBI VCトレードとbitbankが代理受領業者を引き受け、国内居住者向けへの返還対応を行なっています。明らかになる真実東京を拠点とするセキュリティ会社「WizSec」の調査によると、盗まれたビットコインのほとんど、もしくはそれらの全てが2011年後半から徐々に時間をかけてMt.Goxのホットウォレットから直接盗まれたという結論を導き出しました。冒頭で触れた一度目の流出の部分が前震で破産が本震とはまさにこのことです。逮捕、そして再逮捕2015年8月1日にMt.Goxで代表を務めていたカルプレス氏が、私電磁的記録不正作出と同供用の容疑で逮捕されました。同社の社内システムを不正に操作し、自身名義の残高を100万ドル分水増しした容疑による逮捕です。警視庁がカルプレス容疑者らのパソコンを解析すると、現金の入金記録がないにもかかわらずカルプレス容疑者の残高が急激に増えていたことで発覚しました。また同年10月28日には別の容疑で再逮捕されました。2013年9月から12月までの期間で、ユーザーが取引目的で預けていた資金を同社名義の口座から3回にわたり計2千万円を自身の口座に送って着服した疑いです。警視庁の捜査で着服したお金は主に生活費や交際女性への支援で使われていたということです。ビットコインの上昇で膨れ上がる債権2015年9月時点で、約2万4700人のユーザーが届け出た債権の総額が約2兆6630億円になっていると破産管財人より発表がありました。流出時点と比べても当時の上昇は異常で、故に円換算の価格が膨れ上がっています。管財人による売却で市場より回収2018年3月時点で、本件の管財人を担当している小林弁護士より当初の債権者による請求を十分にカバーできる資金を、東京地方裁判所の許可を得た上で市場へのビットコインとビットコインキャッシュの売却により手に入れたと発表しました。売却された合計の暗号資産は約36000BTC(約382億円分)と、約34000BCH(約48億円分)になり、負債の合計をカバーできることは確かでしょう。この発表後より本件の解決に向けた動きが加速し、債権者への返還に関する情報が多く公開されることになります。判決が下される時間逮捕および再逮捕とさまざまな容疑で起訴されていたカルプレス氏ですが、ついに東京地方裁判所から容疑に対する判決が下されました。2019年3月14日、カルプレス氏を不正にデータを書き換えた罪で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決を受けました。検察側は10年を求刑していましたが執行猶予付きのより短い刑で確定したこと、横領や加重背任などの他の多数容疑は無罪になったことにより、損失を多く被ったユーザーからの不満は依然として残っています。返還が正式に決定有罪判決から時は経ちコロナ禍ということもあり少し時間はかかったものの、2021年10月20日の債権者会議で、民事再生計画が債権者の99%(総議決権の83%)で受け入れられ、数十億ドルのビットコインが補償として提供されることが発表されました。またこれらの返還に関する内容は同年年11月16日に正式に承認もされています。ここからは多く情報が日本語であったり度々タイムラインで話題になっているので今までほど詳しく書きませんが、返還に向けて着実にことが進んでいる一方で、犯人の確定や盗まれたビットコインを換金したお金のありかなど、はっきりとしていない部分は多くありました。しかし一昨日(記事執筆時)の6月9日、2人のハッカーを起訴したことが米司法省の発表によって明らかになりました。真犯人は取引所を運営真犯人はMt.GOXのハッキング容疑ではなく、同じくビットコインの取引所を運営している人でした。2017年7月27日、「BTC-e」というビットコイン取引所を運営して40億ドル以上のマネーロンダリングに関与したとしてアレクサンダー・ビニック(Alexey Bilyuchenko)氏を逮捕しました。この時は特にMt.GOX事件との関連性は明らかになっていませんでしたが、結論ビニック氏ともう一人の青年がMt.GOX事件の犯人でした。米司法省は6月9日、ビニック氏と事件当時17歳だったAleksandr Verner氏を起訴しました。容疑はMt.Goxのハッキングによる資産流出と不正な暗号通貨取引所BTC-eを運営していたことです。事件発生から約12年が経とうとしていますが、こうして事件に大きな節目と言いますかひと段落をつけることができました。まとめ長くなりましたが「Mt.Gox事件」の内容はこんな感じです。冒頭でも触れた通りかなり大規模で解決までに時間を要した事件の一つで、これが日本を中心に起こっていたこと。かつての7割以上の取引シェアを日本の企業が占めていたことを思うと少しそこには感慨深いものがあります。またこの事件をきっかけに資産をオンチェーン上で間違えて送信したり、秘密鍵を紛失したりすることで自身の資産に半永久的にアクセスできなくなることを「GOXした」というようになりました。似たような言葉で、CEX(DEXと対比して中央集権的取引所)で顧客の資産を使い込んで破綻するケースが「FTXした」と呼ばれていたり。話を戻すと日本を中心としたビットコインおよび暗号資産のムーブメントは当時がいちばん熱狂的であり、その時代を生きた人たちがいまのビットコイナーを産んでいるのかもしれません。技術的な部分や金融的な文脈での暗号資産も十分面白いですが、たまにはこういった歴史を振り返る機会を持っていただけると業界の人間として風化させないためにとても嬉しいことです。当メディアで激推ししてる取引所「bitbank」です。現在キャンペーンをやっているので、もしよろしければ口座開設して応援していただけると嬉しいです。あとがきそういえば古の話になりますが、Mt.GOXとかしかない時代の対抗馬として存在してた「LocalBitcoins」が最近サービス終了したようです。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%3C%2Fp%3E%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2FYuzoKano%2Fstatus%2F1624051701358419969%22%3E%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3EbitFlyerの代表で当時から暗号市産業界で働いていた加納さんもツイートでこう触れています。こういった昔を思い出すサービスのサ終は少し悲しいものがありますね。