アメリカのFacebook社が「Meta」に社名変更したことで、瞬く間に世界的なバズワードになった「メタバース」しかし、最近ネット上ではメタバースの危険性について批判的な声を投げかけている人も少なくありません。この記事ではなぜメタバースが危険と言われているのかについて解説すると共に、実際の被害事例やメタバース自体の価値について深掘りしたいと思います。メタバースの危険性メタバースの危険性として主に挙げられるものは主に以下の5つです。アバターによるなりすまし行為犯罪や不正行為ハッキングによる資産・個人情報の流出メタバースへの依存による中毒リスク盗聴・盗撮などのプライバシー侵害アバターによるなりすまし行為メタバースの世界の中では自分自身を置き換えた様々なアバターを使用して、メタバース上の他者とコミュニケーションをとったり、プラットフォーム内での買い物を楽しみます。よってゲームの世界での自分のキャラクターのように、メタバース上の外見と現実世界の外見が一致しない場合があります。例えば、アバターでは大人のような見た目をしているのに、現実世界ではその人はまだ小学生である場合などが考えられます。このようにメタバース内のアバターは外見・性別ともに自由に設定することができるので、年齢や性別を偽った犯罪などがメタバース上で起こりうる危険性があります。犯罪や不正行為メタバースという概念は最近始まったものであるため、メタバース世界において現実世界での法律などが適応できるかなど、法整備の面ではまだまだ未確定な部分が多いです。そもそもメタバースの世界は他者の外見も物理法則も現実とは全く異なった世界です。そのため今までには起こり得なかった手口での犯罪が発生する危険性があります。例えばメタバースの世界の造形物の著作権の侵害や、メタバース上に資産を移して脱税する犯罪などが考えられます。このような新たな犯罪に対応するために、メタバース世界における法律の適応などを議論する必要があるでしょう。そして、法整備が不十分な現在は犯罪や不正行為に遭わないようリスク管理する必要があります。ハッキングによる資産・個人情報の流出メタバースの利用者のアバターを通じた行動はメタバース空間で行われるため、メタバースのプラットフォームを提供する事業者は利用者の行動情報をすべて取得できます。利用者はメタバース空間における自身の全ての情報を、メタバースの事業者に委ねることになるのです。そのため事業者は単独で膨大な量の利用者の情報を抱えることになり、そこを狙われて事業者に対してのハッキングが行われ、利用者のメタバース上での資産や個人情報が流出する危険性があります。メタバースプロジェクトを利用する際はセキュリティツールを駆使して脆弱性のあるプロジェクトではないか確認するとよいでしょう。メタバースへの依存による中毒リスクメタバースが引き起こす精神的な危険性も叫ばれています。例えばStatistaによると、メタバースに関しての懸念トップ3は以下のようになっています。1位:バーチャル世界中毒(47%)2位:プライバシー問題(41%)2位(同率):メンタルヘルス問題(41%)また、これらの危険性を代表する「ファントムタイムライン症候群」になる人も増加すると考えられます。ファントムタイムライン症候群とは、メタバース空間の没入感が高いために仮想空間と現実世界の区別がつかなくなるようになってしまう現象です。メタバースの空間に依存してしまうと現実世界と仮想空間の区別がつかなくなり、徐々に仮想空間に依存してしまい、メタバース空間から抜け出せなくなる危険性があります。盗聴・盗撮などのプライバシー侵害メタバース利用者のメタバース上の行動はすべてプラットホームの管理者が把握できるので、悪意のある管理者は利用者がメタバースの世界で何を話しているのかを盗聴し、行動を盗撮できる設計にする可能性があります。さらには悪質な利用者も自身のアバターを透明にして行動したり、メタバース上にカメラやマイクを仕掛けたりして盗聴や盗撮をする危険性も考えられるでしょう。これらの行動は利用者のプライバシー侵害にあたり、健全なプラットフォーム設立までの課題になると言えるでしょう。メタバースで起きた実際の被害事例メタバースのプラットフォーム内で起きた実際の被害事例をご紹介します。Second Lifeでの被害Second Lifeとは、2003年に世界初のメタバース空間としてアメリカのLinden Lab社が発表したメタバース空間です。その当時世界中で大ムーブを巻き起こし、2007年ごろにはユーザー数が100万人を突破しました。しかし、2007年にこのSecond Lifeには2つの重大な欠陥が発見されました。1つ目は、アプリケーションをインストールする過程での設計ミスが原因で、ユーザーのパスワードなどを盗めるようになっていた点です。2つ目は、Second Lifeの中で使用できる独自の通貨である「リンデドル」をユーザーから奪い取れる点です。リンデドルは実際の法定通貨である米国ドルとの交換が可能になっていたため、この欠陥はとても重大な問題として取り上げられました。Second Lifeのこのような事例は現在のメタバースでも十分起こり得ることが考えられるので、事業者はセキュリティの安全を第一に考える必要があります。参考:Second Lifeでリンデンドルが盗難の恐れ--ハッカーが指摘Axie Infinityでの被害Axie Infinityとは、ベトナムの開発企業SkyMavis社によって2018年に初めてリリースされたブロックチェーン・ゲームであり、「Play to Earn(プレーして稼ぐ)」の先駆けとなったゲームです。しかし、2022年の3月に基盤の「Ronin Network」が不正アクセスを受けてしまい、約6億2500万ドル(約770億円)がハッキングによって奪われてしまいました。攻撃者はRonin Networkのノードにバックドアを見つけ、秘密鍵をハッキングして、資金を引き出しました。損失は17万3600イーサリアム(ETH)と2550万ドル相当のUSDコイン(USDC)などになっています。Axie Infinityでの事例もSecond Lifeと同様にメタバースでのセキュリティに問題があることを示す事例であり、メタバースのセキュリティ問題が今現在も完璧ではないと言えるでしょう。参考:約770億円のハッキング被害を補償──アクシー・インフィニティの運営会社メタバースを始める・投資する際の危険性を対処する方法4選メタバースを始める際の危険性に対処する方法は以下の4つです。アカウントのパスワードは複雑なものにするToken Snifferでリスク評価を見るホワイトペーパーを読み込むウォレットを扱う際はセキュリティに注意する1.アカウントのパスワードは複雑なものにする基本的ですがアカウントのパスワードは他者に推測されないような複雑なものにしましょう。メタバース空間では仮想通貨やその他の自身のアセットなどを扱うので、他者に乗っ取られてしまった場合、そのような資産がすべて奪われてしまう可能性があります。2.Token Snifferでリスク評価を見るToken Snifferとは、新しく生まれたトークンや取引が増加しているトークンの情報がまとめられている海外サイトです。さらに、既に知られている詐欺・ハッキングリストなどのトークンのリストや、そのトークンの流動性、契約の情報などを元にその仮想通貨が詐欺コインであるかどうかをスコアリングして表示してくれるサイトでもありますToken Snifferが対応している銘柄であれば、メタバースに投資する場合はその事業者が発行しているトークンが怪しくないか機械的に確認できるため、活用しましょう。3.ホワイトペーパーを読み込むホワイトペーパーとは、事業者の企画や構想、技術的な内容、解決すべき課題とその要因などをまとめた公開文書です。プロジェクトを知ってもらうためのアピール文書の役割も果たしています。ホワイトペーパーを読み込むことで、プロジェクトがどのような設計でどのような目的を果たすのかを確認でき、事業に投資する際の判断に役立ちます。4.ウォレットを扱う際はセキュリティに注意する自身のトークンを保管しておくウォレットを扱う際にも注意が必要です。仮想通貨のウォレットにおけるセキュリティ対策を2つ挙げます。1つ目はフィッシングサイトに自分のウォレット情報を入力しないことです。インターネットでは、仮想通貨のサポートセンターと偽るサイトや怪しい登録サイトなどが多くあります。偽サイトに自分のウォレットアドレスを入力すると、ウォレットのシードフレーズを盗まれてしまうので、必ずURLを確認して公式サイトのみにアクセスしましょう。公式サイトかどうかわからない方は、プロジェクトのTwitterアカウントに添付してあるURLやCoinMarketCapから遷移しましょう。2つ目はハードウェアウォレットの使用です。ハードウェアウォレットとはウォレット機能のみを目的として設計された小さな端末のことであり、ソフトウェアのインストールはできないので、コンピューターの脆弱性やオンライン上の盗難に対して非常に安全です。また、バックアップ機能も備わっているため、端末を失くしても自分の資産を取り戻せます。参考:ウォレットの保護メタバースは利用する価値あるの?バスワードとなっているメタバースですが、利用する価値はあるのでしょうか?以下ではメタバースのメリットとデメリットをあげたいと思います。メタバースのメリット現実世界ではできない体験ができる世界中の人とよりリアルなコミュニケーションをすることが出来る新たなビジネスチャンスが生まれる障がいや病気を乗り越えられる可能性がある(障がいや病気によって現実世界で体を満足に動かすことができない人も、メタバースの世界では健常者と同じように行動できる)顔をあわせないので感染症対策になる上記の要因から、メタバースは以下のような方におすすめです。世界中の人とよりリアルに繋がりたい人新しい世界を体験したい人メタバースをビジネスチャンスだと考えている人メタバースのデメリットメタバースに依存して日常生活に支障をきたすリスクがある現実世界を軽視してしまう可能性専用のセキュリティ対策が必要メタバース技術には莫大なコストがかかる上記の要因から、メタバースは以下のような方にはおすすめできません。画面酔いしやすい人ネットに依存してしまう人メタバースの将来性は明るい?技術的には年月が浅く認知も低いメタバースですが、令和4年「通信情報白書」によると、メタバースの市場規模は2021年は4兆2,640億円でしたが、2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。またMetaやNIKEなどの海外企業はもちろん、博報堂・電通・大和ハウスなどの国内大手企業も続々とメタバース市場に参入しています。大企業の参入はメタバースにビジネスチャンスがあることを示しており、多くの面での期待が予想されるでしょう。ただ、2023年時点ではメタバース事業で失敗している企業が多く、以下の記事で失敗している原因を詳しく解説しています。関連:メタバースは失敗している?大企業の撤退から考える今後のビジネスチャンスメタバースの危険性-まとめメタバースは世界を大きく変えうる素晴らしい技術ではありますが、まだまだセキュリティ面での課題や依存性の問題など危険性は多くあります。しかし、これから国が法整備などメタバースに関する課題解決に向かうことは間違い無いでしょう。さらに、個人としてもメタバースが普及する未来に備え、メタバースに関するリテラリーを高く持つことが必要になるでしょう。関連:メタバースのやり方・始め方を簡単5ステップで解説!【気軽に体験したい方へ】