本記事ではメタバース×教育について解説します。現在メタバースは単にゲームや交流の場として利用されるだけでなく、教育の場としても利用されつつあるのです。メタバース上で教育サービスを行うことにはさまざまなメリットが存在します。メタバース上での教育サービスが注目されている背景や、メタバース上での教育の活用事例についても解説しているので、メタバース上での教育サービスに参入したい方は必読です。メタバース教育とは?メタバース教育とは、メタバース上で行われる教育サービスのことです。メタバースはゲームや交流の場としてのイメージが強いですが、実は教育の場としての活用も盛んになっています。メタバース教育の用途メタバース教育の用途は主に以下があります。教育のIT化を進めるための手段場所を問わず学べる環境作りメタバースはオンライン上のバーチャル空間にあるので、オンライン学習の手段として有効です。また従来のオンライン授業と違って三次元空間上で行われるため、体験型の授業を行えるなど、今までのオンライン授業にないメリットが存在します。メタバース教育が注目されている背景・メリットメタバース教育が注目されている主な背景・メリットは以下の4つです。場所を問わずに学習や研修を行える現実世界では行えない授業の提供不登校生徒の支援ができる特別支援学校や入院中の子どもに授業を提供できる場所を問わずに学習や研修を行えるメタバース上での教育は、インターネットが繋がっている限り世界中のどこでも行えます。現実世界の学校や塾と違って、わざわざその場所に移動する手間が省けるのです。また、実世界の研修では外に出かけたり、人に会いに行ったりする必要がありますが、メタバース教育ではその必要はありません。どこにいてもメタバース空間にログインするだけで、行きたい場所に行き、会いたい人と会えます。現実世界では行えない授業の提供メタバース教育の大きなメリットとして、現実世界では行えない授業を提供できます。現実世界では黒板やホワイトボードを使って授業を進めてる場合が多いですが、それでは授業の内容を表現できる限界が存在します。メタバース空間では自由に空間を設定できるため、教育者が伝えたいことをより分かりやすく、視覚的に体験を通して伝えられます。例えば歴史の授業では、そのときの時代をメタバース空間上で再現する、体験型の授業を行えます。不登校生徒の支援ができるメタバース教育によって、不登校の生徒にも教育の支援ができます。文部科学省によると、小・中学校の不登校の生徒は年々増えており、令和三年度には、小・中学校における長期欠席者のうち、不登校児童生徒数は244,940人で、不登校児童生徒数は9年連続で増加し、過去最多となりました。画像出典: 認定NPOカタリバメタバース教育による不登校生徒の支援として、認定NPOカタリバを紹介します。カタリバが2021年から開始したオンライン不登校支援プログラムでは、学校への登校が難しい児童生徒とその家族を対象に、メタバース空間を活用して子どもそれぞれの状況に合わせた個別支援計画の作成や、保護者・子どもそれぞれに対する定期的な個別面談、オンライン教材を活用した学習支援などを行っています。特別支援学校や入院中の子どもに授業を提供できるメタバース教育によって特別支援学校や入院中の子供にも授業を提供できます。特別支援学校や入院中のこどもたちは、個人それぞれの児童・生徒の病状や状況により実際に通学して、学習する機会が限られている事が多いです。メタバース教育は、ネットの環境さえあれば、どこにいても学習を進められるので、特別支援学校や入院中の子どもたちの学習の遅れを解消できます。画像出典: D-SHiPS JOURNEY実際に特別支援学校や入院中の子どもを支援するメタバースプロジェクトの例として、2022年から発足した『D-SHiPS JOURNEY』が存在します。このプロジェクトでは、アートとテクノロジーの力を使い『支援の形』としてNFTアートを発行し、NFTの販売を通じて得た収益を用いて、身体が不自由な子どもたちとメタバースを企画・制作し、完成したメタバース体験を全国の子どもたちへ届けます。メタバース教育の活用事例メタバース教育の活用事例としては以下のものが存在します。AOIメタバース校:総合選抜専門塾東京大学:メタバース工学部株式会社サイバーフェリックス:メタバース英会話STRIVR:メタバース空間で従業員研修VictoryXR:メタバース大学AOIメタバース校:総合選抜専門塾画像出典: 総合型選抜専門塾AOI総合型選抜専門塾AOIは、総合型選抜の対策を主とした大学受験対策塾です。メタバース校は、バーチャル上の教育空間(MetaLife)を校舎としています。メタバース校に所属する生徒は自身のアバターを作成し、ひとつのスペースに参加するため、リアル校舎のように同級生や講師と交流することが可能です。授業においてもバーチャル上の教育空間(MetaLife)のビデオ通話を使用して行われます。そのため、通常のオンライン授業サービスに加え、リアル校舎と同等の体験が可能であり、周囲に総合型選抜を受験する友人がいない地方の高校生や部活動生にとって大変人気となっています。東京大学:メタバース工学部画像出典: 東大メタバース工学部東京大学院工学研究科・工学部は2022年秋に東大メタバース工学部を設立しました。東大メタバース工学部は中高生向けのジュニア講座、社会人向けのリスキリング講座、工学進路・キャリアの総合情報サイトの三つの部門が存在します。一回の授業で受講者が約1500人を実現したこともあり、幅広い年齢層がメタバース教育を手軽に受講できます。株式会社サイバーフェリックス:メタバース英会話画像出典: 株式会社Cyber Felix株式会社サイバーフェリックスはメタバース英会話を運営しています。サイバーフェリックスが運営するメタバース英会話では、フォートナイトやマインクラフトといったメタバース空間の中で遊びながら学習できるのです。メタバース英会話の学習は個別指導の方式であり、講師は全員バイリンガルという特徴があります。ゲーム感覚で楽しく英語を学びながらも、仮想空間で実践的な英語の使い方を学べます。STRIVR:メタバース空間で従業員研修画像出典: STRIVRSTRIVRはVRを利用した企業のトレーニングシステムを開発しています。STRIVRの企業トレーニングはVRを使いリアルで没入感の高い体験を提供し、従業員を実際の就業環境に置き、従業員らの能力開発とその維持を促進します。VRトレーニングを導入する企業は増加しており、ジェットブルー航空、Fidelity、タイソン・フーズ、ユナイテッド・レンタルズといった企業がSTRIVRのトレーニングシステムを利用中です。導入済みの企業では約9割がメタバース研修でよく身についたと回答しました。VictoryXR:メタバース大学画像出典: VictoryXRVictoryXRはMetaと協力して、完全空間3Dで構築された既存のキャンパスのレプリカであるデジタルツインキャンパスを 2022 年に米国の大学で立ち上げることを発表しました。デジタルツインキャンパスは現実の大学そのままの見た目をしており、学生はそこで現実世界の大学と同じように移動・交流し、学習できます。VictoryXRのCEOであるSteve Grubbs氏は、VRの活用によって没入型の学習環境を提供し、生物学・化学・歴史その他の科目を勉強する学生の学習体験の向上を目指しています。メタバース教育市場の将来性メタバース教育市場の将来性はあると言えます。理由は以下の3つです。社会人からの需要が高まる可能性がある教育の提供が難しい地域で需要が高まる可能性がある子どもたちのITリテラシーの向上につながる社会人からの需要が高まる可能性がある現代では「学び直し」「リスキリング(技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと)」などが話題になっています。特に社会人で学び直しをする人は多く、学習環境として家でも学習できるメタバース教育は需要が高まることが予想されます。メタバース教育で学び直しをしつつも、メタバースという最新の技術を利用しながら学習できるので、リスキリングの一つの方法としても利用できるのです。教育の提供が難しい地域で需要が高まる可能性があるユニセフによると、2021年時点で学校に通っていない子どもたち(6歳〜17歳)は、2億4,400万人に上ります。貧困や労働、紛争など学校に通えない理由はさまざまです。メタバース教育は、そんな教育の提供が難しい地域で需要が高まる可能性があります。メタバース教育ではネット環境さえ整備すれば、世界中どこからでも質の高い教育を提供できるのです。メタバース教育は社会全体の発展と、平和で豊かな世界の実現に寄与するでしょう。子どもたちのITリテラシーの向上につながるメタバース教育は子どもたちのITリテラシーの向上につながります。メタバースという最新の技術を教育を通して使いこなせるようになれば、通常の学習効果に加えて、自然とITリテラシーが向上することが予想されます。メタバース教育では子どもたちが能動的にメタバース空間を利用して学習するので、従来の情報の授業のような能動的な学習に比べて、リテラシー教育に関しては学習効果が高いです。メタバース教育の問題点・デメリットメタバース教育の問題点・デメリットとしては以下の2つが挙げられます。初期費用や導入ハードルが高いVR酔いしてしまう恐れがある初期費用や導入ハードルが高いメタバース教育の初期費用や導入ハードルが高いのは、メタバース教育の普及の妨げになると考えられます。例えば、児童全員分のVRゴーグルや学習プラットフォームを構築するのには莫大な金額が必要となるでしょう。また教員側のメタバースに対する理解も必要です。まずは教員側がメタバース空間に対しての理解を深め、その利用方法をマスターしなければなりません。VR酔いしてしまう恐れがあるVRを使用するメタバース教育の問題として、VR酔いしてしまう恐れがあることが挙げられます。現在多くの人が何時間にもわたってVRを着用したことがないので気分が悪くなったり、頭痛がしたりなど、VR酔いしてしまう人も出てくるでしょう。当然VR酔いする人が多数発生すると授業をストップすることになり、授業として成り立たなくなる場合も考えられます。メタバース教育-まとめ現在多くの企業や個人がメタバース上での教育を活用しています。メタバース教育には、場所を問わず教育を受けられるなどのメリットも存在しますが、問題点も存在するのも事実です。しかし、従来の教育では不可能なことを実現でき、好きなことを自由な場所で学習できるメタバース教育は期待と魅了で溢れています。