去年の年末ごろから特に聞くようになった「トラベルルール」という言葉ですが、私たちの暗号資産(仮想通貨)の取引所からの出金に大きな変化と影響を与えています。トラベルルールとはなにかトラベルルールは私たちにどんな影響を与えているのかトラベルルールで準備するべきことこの記事を読むことで上記の3つのポイントを知ることができます。トラベルルールとはトラベルルールとは、FATF(金融活動作業部会)が提言しているマネーロンダリングおよびテロ資金へのお金の流れを防ぐために作られた国際的なルールです。いままでは電子的なお金の移動を伴う電信送金(為替取引)に対して広く適応されていましたが、近年の暗号資産の普及を考慮し暗号資産の移転にも適応すべきとの意見から、暗号資産を扱う事業者向けにも同ルールが適応されるようになりました。「travel」と聞くと旅行をイメージしますが、英語の意味での価値の「移転」や「移動」から来ています。ブロックチェーンおよび暗号資産の普及や進歩が日々進む中、ルールメイクが十分に行われていなかった背景から近年このような流れが加速しています。その中でもFATFはマネーローンダリング防止対策(AML)およびテロ資金供与防止対策(CFT)の観点から国際基準を提言する立場として力を強めています。増加し続ける犯罪資金の洗浄不法なもの(麻薬や違法データ)の取引や脱税などによって得た違法な資金(出どころが汚いお金)を足の付かないきれいなお金にすることはマネーロンダリングや資金洗浄と呼ばれています。それらの資金が世の中に出回らないようにAMLやCFTなどの対策が行われているわけですが、件数は増加する一方です。疑わしき取引の件数は、平成25年の34.9万件から令和4年には58.3万件に増加。関連事案の検挙数も、同期間で272件から709件に急増しています。疑わしき取引に注目してみても暗号資産関連の報告の伸びが顕著なことから国内でも追加の対策が検討されています。その中の一つがトラベルルールだと言うわけです(参考資料: 警視庁 令和4年年次報告書)。取引所の門番的な役割ブロックチェーンの技術や暗号資産の登場は世の中に大きな正のインパクトを与えています。それと同時に負のインパクトがあったことも忘れるべきではないです。通常の詐欺であれば資金の受け取りに銀行口座を利用したり、実際に現金の受け渡しを行う必要があるため比較的足が付きやすかったものが、暗号資産を介して誰でもがウォレットを作れる状態でそれらが行われた場合、そのウォレットが現実世界の誰のものかを特定することは非常に困難になったということです。そのため多くの詐欺やハッキングの被害が発生し、先述した通り暗号資産を介したマネーロンダリングが行われているのが現状です。しかしその資金を現金化しないといまの世界では使えないので、多くの場合は取引所で法定通貨(日本円や米ドル)に換金を行うわけです。よって出口として取引所を通さないと多量の現金化が困難なため、取引所が最後の砦になっているというわけです。なので取引所の口座開設には本人確認(KYC)が必要で、特に国内事業者ではどの取引所でもこの工程が必須化されています。トラベルルールが与える影響トラベルルールによって影響がある内容について見ていきましょう。理解する上で現行までのトラベルルールと、2023年5~6月より適応される新しいトラベルルールの2つに分類して考える必要があります。現行のトラベルルール現行実施されているトラベルルールは、国内の暗号資産交換業者向けに一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が主導して行っているものです。「金融庁が告示で指定する法域で、当該法域の当局によってライセンス登録を受けた暗号資産交換業者に対して、利用者が暗号資産を移転する取引」を満たしている場合を「要通知取引」とし、通知が義務付けられています(参考資料: JVCEA)。そして要通知取引に満たした場合は、下記の5つの情報を当該事業者に提供する必要があります(下記に関して事業者によっては追加情報を求めている場合もあります。)。送付人の氏名送付人の住居or顧客識別番号等送付人のブロックチェーンアドレスor当該アドレスを特定できる番号受取人の氏名受取人のブロックチェーンアドレスor当該アドレスを特定できる番号しかし受取先の取引所および事業者への通知が除外されるケースも存在しています。それは先程の「金融庁が告示で指定する、、、」を満たさない要通知取引じゃない場合です。アンホステッドウォレットへの送付無登録業者への送付上記のケースの場合は、ウォレットの属性や送付先事業者のリスク査定を事業者単位へ判断が委ねられるため、一方の事業者からは出庫できても他方の事業者からは出庫できないなどのことが起こる可能性があります(参考資料: JVCEA)。新しいトラベルルール新たに2023年5~6月より実施されるトラベルルールは、同年5月1日現在でbitFlyerとCoincheckの2事業者のみで適応されることが表明されています。なので先述した2事業者以外の事業者では同時期以降も現行のトラベルルールか、現行のトラベルルールを応用した独自のトラベルルールを採用しています。ここでの新しいトラベルルールで重要になるのは「TRUST」の採用です。TRUSTとは「Travel Rule Universal Solution Technology」の略で、Coinbaseが提供しているグローバル市場で安全に顧客のプライバシーを守りながら、トラベルルールに準拠した情報のやり取りを提供する仕組みです。トラベルルールの準拠にTRUSTを採用した国内の暗号資産交換業者は、トラベルルールの通知対象国かつTRUSTを採用してない事業者への暗号資産の送付ができなくなります。例えばTRUSTを採用しているCoincheckから、TRUSTを採用していないZaifへの送付ができなくなるようなイメージです(参考資料: 金融庁)。この記事も読む: 新しいトラベルルールのTRUSTとSYGNAとは?私たちに与える3つの影響新しいトラベルルールに向けた準備新しいトラベルルールの開始が迫る中、いくつかの心構えが必要かもしれません。いまのうちに出庫を済ます複数の取引所で暗号資産を管理している場合、特にbitFlyerやCoincheckとその他の暗号資産交換業者を併用している場合、これらの取引所間の移動ができなくなる可能性があります。そうなると一度セルフカストディウォレットや通知対象外の国で提供されているサービスを経由する必要が生じ、シームレスな資産の移動が困難になることが予想されます。この記事も読む: 国内取引所間の送金ができなくなる?国内事業者のトラベルルールについて完全解説上記の2事業者からの出金や逆に入金を考えている場合、TRUSTの導入が本格的に開始する前に出金や入金を済ませておいた方が良いかもしれません。最新情報を常に確認するご利用の各暗号資産交換業者からのお知らせやニュースは常に確認するようにしましょう。日々状況が変化する中で、この記事を読んでいるときにはTRUST対応の取引所が増加している可能性があります(当メディアでも確認でき次第、情報の更新を行います)。よくある質問トラベルルールがSNSなどで注目された際に、よく話題に上がっているいくつかの疑問点について解説します。メタマスクに送れなくなるの?メタマスクのようなセルフカストディウォレットへの移転ができなくなるのではないか。との声が上がりますが、暗号資産交換業者の判断は置いておいて、現状でそのような出庫が規制されているわけではありません。従わないと罰則はあるの?トラベルルールは国内の暗号資産交換業者に適応されているので、出金を行う際にルールに従う必要があります。一方で情報提供を拒否したからといって罰則があるかというとそんなことは一切ありません。しかしトラベルルールに従わないと、出庫に関わるサービスを受けることができないということを知っておく必要があります。入金のときにも必要なの?現状のトラベルルールは特に日本国内の暗号資産交換業者からの出庫に係る規則のため、特に入金(入庫)のときに制限があるわけではありません。しかし近年加速するマネーロンダリングの影響により、入金時の確認を各事業者で強化している影響で従来より入金に時間を要したり、追加情報を求められるケースも出てきています。まとめこの記事ではトラベルルールに関して以下の内容を解説しました。最後に一緒におさらいをしましょう。トラベルルールとは取引所から暗号資産を移動するときの国際的なルール新しいトラベルルール適応に向けて準備しよう決してメタマスクなどに出金できなくなるというわけではない国内外問わず規制の強化がアメリカおよび関連機関から広がっていっている事により、暗号資産の良さが少しずつ失われつつあるのが現状です。その中でも試行錯誤していきながらマスにクリプトが広がって行くと嬉しいですね。